プレス加工の次の一手は?
リスク管理は世界水準というのはブラックジョークだ。
背伸びをして自己資本比率を高く見せようとする背景には、邦銀のあせりがある。
メガバンクは、MFグループを除いて、金融危機による直接損失は欧米有力金融グループより少なかった。
だが欧米勢の損失規模が見えてくると、市場の視線は損失を埋め合わせる収益力と、損失を吸収する資本に移った。
収益を国際比較すると、邦銀の見劣りは否めない。
利ざやは米銀の3・18%に対して、メガバンクは1・3〜1・8%。
利益で見ると、JPの1〜3月期の引当前利益は135億ドルと、MUの1年分の連結業務純益(一般貸し倒れ引当繰り入れ前)に匹敵する。
自己資本の質も高いとはいえない。
邦銀は普通株による自己資本が薄く、それを優先株などで補ってきた。
とりわけMSFグループは、一定期間後に満期が来る優先出資証券を毎年のように出す自転車操業で自己資本を保ってきた。
表向きの基準はクリアしているが、国際的には「劣後資本は永続性に劣り、不況期の損失吸収力が疑問視される」と指摘されていた。
資本の質を問う流れに拍車をかけたのは、米国が大手金融機関に実施した健全性審査(ストレステスト)だ。
米国はその中で普通株主体の自己資本比率(コアティア1)を重視する姿勢を打ち出した。
この普通株主体の自己資本比率が低いため、MSやMは相次いで普通株増資に走った。
どんな手段を使っても自己資本比率を高く見せようとする姿勢は、パーゼルIのときの対応に似ている。
1988年にパーセルIがパーゼルI案を打ち出そうとしたのに対して、日本は自己資本を計算する際に保有株式の含み益を自己資本に認めるよう求めた。
株式は、価格変動リスクが大きく、本来的には資本として認められるような資産ではない。
しかし邦銀の意向を受けた日本の大蔵省は、保有株式には資本性があると主張し、株式の含み益の補完的自己資本(ティア2)に入れることで欧米当局の同意を取り付けた。
部年は資産バブルの真っ最中で、邦銀の株式含み益は膨大だった。
それを算入した邦銀の自己資本比率は高く、融資余力は大きく見えた。
余力を利用して、旧態依然としたオンバランスの貸し出し業務に狂奔した。
欧米銀行は従来型のオンバランス取引から決別しようとしているときに、邦銀だけ世界的な金融取引の潮流を無視した。
結果は悲惨だった年末をピークに株価が下落を始めた。
それに伴って邦銀の自己資本は急速に目減りし、バブル期の株価を前提とする融資の維持が難しくなった。
健全性に背を向けた数字上のつじつま合わせは破綻した。
パーゼルEに関しては赤字で、本来的に十分な資格を備えていないのに先端的内部格付けモデルを利用した。
見かけの自己資本比率は欧米並になり、ゆとりができた自己資本分は投資銀行業務の強化に割りあてた。
自己資本をよく見せかけて、欧米の潮流と異なる方向に注力するのはパーゼルIのときと同じだ。
パーセルIがパーゼルI、パーゼルEを通じて発したメッセージは、自己資本が銀行経営のバッファーで、それを充実する必要があるというものだった。
普通株で資本を拡充することが王道だったが、邦銀は激変緩和策として用意された策を最大限利用して普通株資本の充実を怠ってきた。
パーゼルI案の発表から初年間もの時聞があったのに、いまだに強い資本は築けていない。
パーセルIは資産の内容の見直しをしてきたが、資本についても国際的な統一が必要との声はくすぶり続けていた。
邦銀のように、資本政策を数字合わせに終始する金融機関があったためだ。
邦銀は普通株を主体とした自己資本比率(コアティア1) の重視について「突然ルールを変えるのはおかしい」と主張するが、突然ではなく遅きに失した当然の見直しだ。
邦銀と日本の金融当局は、パーゼルの規制の本質を直視する必要がある。
それは銀行には十分な自己資本が必要であるというあたりまえのメッセージである。
今満たせないからごまかせばいいという対応ではなく、真撃な自己資本の積み増しという原点に返った対応をしないと、日本の金融システムへの信頼は回復しない。
2009年6月、日本は銀行と証券の業務の業務隔壁(ファイアーウオール)を緩和した。
銀行と証券会社が顧客企業の情報を共有したり、役職員の兼務ができるようになった。
これを受けてMFグループがMC銀行とM証券の共同のチームを作るなど、銀行、証券融合に向けた歩みを進めた。
しかし米国は、O大統領が発表した金融規制改革案で、銀行とその子会社間のファイアーウオールの強化を打ち出した。
銀行、証券の規制緩和の行きすぎへの反省で、日本はグローバルな方向性に背を向ける形になった。
不良債権問題をほぼ克服した金融庁は、市場の競争力を強化する検討を始めた。
住宅バブルで沸く欧米の金融取引が膨らみ、日本との差が聞いたからだ。
東証での株式売買が、上海、香港、シンガポールに急速に追い上げられていることもあり、規制緩和による取引の活発化をめざした。
少子高齢化が進む中で、金融が高い付加価値を生み出すことが経済の持続的な発展につながるとの考えも背景にあった。
欧米でサブプライムローン問題が発覚し、日を追うごとに深刻化していった前年。
金融審議会は規制緩和の議論を進めていた。
ひとつは金融審議会金融分科会第一部会(部会長・I慶膳義塾大学経済学部教授、部会長代理・H野村資本市場研究所執行役)で、銀行、証券間の業務隔壁規制の見直し、プロに限定した取引の活発化、課徴金制度の見直し、上場投資信託の拡充など取引所の拡充などを打ち出した。
もうひとつは金融審議会金融分科会第二部会(部会長・I東京大学大学院法学政治学研究科教授、部会長代理・O日本総合研究所理事)で、銀行・保険会社グループに兄弟会社を通じて商品の現物取引や商品デリパティブの現物決済を解禁する方向を打ち出した。
商品デリパティブについては差金決済は認められており、本格的に手がける体制を後押しした。
金融審議会の議論を受けて金融庁は、「市場強化プラン」をまとめた。
その内容は、信頼と活力のある市場の構築、金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境の整備、よりよい規制環境の実現、市場をめぐる周辺環境の整備が柱だ。
その一環として、銀行、証券の業務隔壁緩和、銀行・保険グループの業務範囲の拡大を打ち出し、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」としてまとめた。
同法案は6月に可決成立、業務隔壁緩和年6月から実施した。
金融審議会は、政府に迎合する御用学者を中心に構成されている。
規制緩和で直接利益を事受できる銀行や証券会社の関係者も入っている。
内外金融情勢に精通している有識者とはいえないようなメンバーも混じっている。
そうした陣容でまとめた市場強化プランは、サブプライムローン問題で激変する欧米の金融環境を映すことはできなかった。
それどころか市場強化プランは、国際金融センターとしての都市機能向上を盛り込んだ。
それに沿って不動産業界などで構成する国際金融拠点フォーラムが構成され、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンを含む新橋周辺・赤坂・六本木地域と丸の内ピル、日本橋三井タワーを含む東京駅・有楽町地域を、金融拠点機能を先行的に強化する地域に指定した。
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